味の素は、いかにして社員に働き方改革のヴィジョンを共有したか~あいち飲食店開業資金支援センターが、他社の事例を参考に飲食店の働き方改革をどうするかをお伝えします。

味の素は、働き方改革のヴィジョンをどう共有したのか?~氷山モデルを使った問題解決アプローチ

味の素はいかにして社員に働き方改革のヴィジョンを共有したか?

愛知県の飲食店の創業や多店舗化を
「お金」と「働き方改革」で

戦略的に加速する税理士の山内聖堂です。

愛知県の飲食店専門税理士が、

飲食店の働き方改革につながる
着眼点についてお伝えしています。


前回のコラムでは、

味の素が、


「食品会社で世界トップテン入り」

というヴィジョン実現のため、

労働時間の短縮を目指し、

「7時間労働で新たな価値を創造する会社」

に変わるという、

働き方改革のヴィジョンを掲げ、

実際に労働時間を削減している取組についてお伝えしました。

前回のコラムはこちら


働き方改革を始めるには、

まずはヴィジョンを策定し、

そのヴィジョンを社員と共有することが大切です。


因みにヴィジョンとは、

ある時点までに
「こうなっていたい」と考える到達点、

つまり、

自社が目指す中期的なイメージを示したものです。


イメージであるためには、

社員がその状況を
頭の中に思い浮かべられなければなりません。


頭でイメージできるようにするためには、

イラストなどを活用するのも有効でしょう。

出典:味の素流「働き方改革」と「健康経営」

しかし、

味の素はもっと大胆な方法でヴィジョンを共有し、

労働時間の削減を実現しました。


それは、

所定労働時間を20分削減するときに、

退社時間を午後5時20分から、

午後4時30分に変更するという、

思い切った「しくみ」を導入したことです。


就業時間を5時に変更していても、

生活は以前と大して変わらないと考え、

収入のために残業をする社員も減らないでしょう。


しかし、

4時30分に終われば、

社員は帰宅ラッシュの前に帰路につくことができ、

明るいうちから、

趣味や家族の団らん、

キャリアアップのための勉強といった

さまざまな選択ができるようになると考えました。

社員が、

「収入が下がっても早く帰りたい。」

と思えるような制度設計にしたのです。


その結果、

「収入が下がっても早く帰りたい。」

というのが社員の共通のヴィジョンに変わったのです。


もちろん、

顧客の企業の終業時刻は、

これまでと変わらず5時以降ですから、

終業時刻を早めただけでは、

残業はかえって多くなっていしまいます。


そこで、

フレックスタイム制や在宅勤務を

さらに進めることを前提に、

終業時刻を4時30分にすることで、

社員の残業時間は大幅に減少し、

社員は趣味や勉強の時間を確保したり、

家庭の事情に左右されることなく、

フルタイムで働くことができるようになったそうです。

なぜヴィジョンの共有がうまくいったのか?

ヴィジョンの共有とは、

本来時間とコストをかけて行わないと難しく

特に従業員数が多い大企業になると、

その共有の難易度は上がる傾向にあります。


特に、

働き方改革といった複雑な問題では、

そのヴィジョンの共有・共感は、

さらに難しいものとなります。


では、

なぜ味の素は急速にヴィジョンを共有し、

そのヴィジョンの実現が出来ているのでしょうか?


それは、

氷山モデル

という問題解決アプローチで説明できます。


氷山モデル問題解決アプローチは、

様々なレベルで物事のつながりと全体像を把握する、
問題解決アプローチです。



問題が起こったという「できごと」は、

そこに至る「パターン」の上に起こるものであり、

そのパターンは「構造」によって生み出され、

そしてその構造は関与する人たちの
「メンタル・モデル」によって作られる。

という問題意識から作られたツールです。


できごとという問題は、

氷山の一角だということを表してもいます。


氷山モデルは、

働き方改革のような複雑な問題をどう解決するか?

を考えるときに優れた効果を発揮する

フレームワーク
です。



氷山モデルを使って問題を掘り下げてみましょう。

それでは、

働き方改革を始める前の、

味の素の長時間労働体質を

氷山モデルで見てみましょう。


できごと

国際的に優秀な人材を採用できない。
(国際的に競争力のある企業になれない)


時系列パターン

日本的な長時間労働が常態化している。


構造

終業時刻が5時20分。

顧客からの連絡が夕方以降に多い。

労働時間を減らせば売上が落ちる。


メンタルモデル

顧客第一

長く働く社員が優秀とみなされた時代

他の人が残業しているのに帰るのは悪い


メンタルモデルは、

人々の価値観や信条といったものなので、

簡単に変えることは難しく

問題解決のためには、

構造をどう変えるかが重要です。


もし、

味の素が所定労働時間を短縮するときに、

単純に就業時間を5時としたのであれば、

社員に染みついた長時間労働の習慣は、

なかなか消えなかったでしょう。


しかし、

終業時間(構造)を4時30分に変更したことにより、

新たなプライベートな時間が生まれ、

社員が早く帰りたくなる。

といったメンタルモデルの変更に成功したのです。


構造を変えることにより、

メンタルモデルの変更に成功したので、

味の素の働き方改革のヴィジョンは急速に浸透し、

労働時間の短縮を、

短期間で実現したのでしょう。

働き方改革を体感するセミナーを行います。

働き方改革のような複雑な問題は、

社長やリーダーだけで解決できるものではありません。


会社のなかの各部署が連携して、

最適な手を打たないと、

他の部署で問題が発生したり、

そもそも利益が下がるといったことが起こります。


6月に、

社員が主体的に参加して、

働き方改革を行っていく状況を体感していただく、

働き方改革セミナーを行います。


あわせて、

働き方改革関連法や、

助成金についてもお伝えする予定です。


セミナーの詳細はこちら

ご興味のある方は、

相談・お問合せよりお問合せください。


今回も最後までお読みいただき、
ありがとうございました!

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