愛知県の「こだわり」飲食店の創業や多店舗化を
「お金」と「チームビルディング」で
戦略的に加速する税理士の山内聖堂です。
前回は、
日産自動車がコンプライアンス違反をしたことにより、
経営に大きな打撃を受けている事例から、
企業における問題解決アプローチの方法について
ご紹介しました。
前回のコラム
日産のコンプライアンス違反に見る問題解決の処方箋その1
はこちら
コンプライアンスとは、直訳すると「法令遵守」ですが、
倫理や社会規範も含む概念のことです。
日産の工場では、
コンプライアンス違反が発覚した後も、
経営陣の意(通達)に反して、
現場でコンプライアンス違反が繰り返されていました。
日経新聞では、
「管理能力の低さ」
日産自動車社長によると、
「課長と係長のコミュニケーションギャップ」
に問題があったため、
問題が解消しなかったということでした。
それに対して私は、
「氷山モデル」というツールを使いながら、
問題のもっと根本にある「構造」の問題や、
「企業文化」の問題を解決すべきであるという考えを述べました。
すなわち、
「生産台数に対して検査の有資格者の絶対数が不足している」
という「構造」の問題にまず着手すべきであったし、
「コンプライアンス違反に対する危機感が
現場に不足していた。」
という「企業文化」の変革に着手すべきだったのです。
後者は時間がかかるので、
即効性はありませんが、
ここを解決しないとまた似たような問題が起きるでしょう。
もう一度「氷山モデル」について確認してみましょう。
問題という「できごと」は、
「パターン」や「構造」、「メンタル・モデル」といった
表面には現れない問題が内包されており、
場当たり的に「できごと」に対処しても、問題は繰り返されます。問題の発生は、
氷山の一角が水面に現れた状態に似ているので、
こう呼ばれているのでしょう。
日産は、
無資格者が検査をしていたという「できごと」のみを解決し、
結果、問題は解決しませんでした。
以降は、新聞やニュースなどから知った、
私の個人的な「予想」に基づくものです。
真実は現場にしかありませんので、
実際は違うのかもしれませんが、
事件が明るみになっていく経緯から、
「こういった問題があったのではないか?」
と予想して書いています。
あくまで想像上ですが、
私は、今回まずやるべきだった事は、
完成車検査1台にかかる時間をしっかり計測し、各工場の生産目標と有資格者の数を適正にする。という事だったと思います。
それが例え生産目標を下方修正することがあったとしてもです!日産は今回、生産数を調整することをしなかったと予想しています。
その結果、
生産目標を達成するために、
いくつもの工場でコンプライアンス違反が繰り返されたのでしょう。
そして、
二週間もの間、生産を停止しなければならない状況に追い込まれたのです。
時間はかかりますが、
これから日産は
「企業文化」の変革にも取り組まなければなりません。「構造」を解決しても、
「企業文化」を改善しなければ、
また同じような問題が起こるからです。
企業文化とは、
氷山モデルの言うメンタル・モデルと、
企業の経営理念やルールを合わせたもの。
企業文化=個々のメンタル・モデル × 経営理念・ルールと私なりに定義しています。
個々のメンタル・モデルはそれぞれ異なっており、
それらの
異なったメンタル・モデルがバラバラのままでは、チームや組織として一体となって行動するのは難しいです。
そこに、経営理念や企業のルールなどを通じて、
組織の価値観として一定の同意を得ることにより、人は同じチームとして行動しやすくなるのです。
この「企業文化」に手を付けることなく
表層的な問題を解決しても、同じような問題が繰り返し起こるということは、日産の傘下に入った三菱自動車が証明しています。
今回なぜ「企業文化」を変革する必要があるかというと、
日産自動車は企業理念に、「コンプライアンスを重要視している」と謳っているからです!
日産の企業HPには、
日産の企業ビジョンとして、
「人々の生活を豊かに」
社会貢献ビジョンとして、
「業界をリードする持続可能な企業を目指す」
と掲載されています。
そして、
グローバル行動規範の1番目が「法律・ルールの遵守」となっているのです!ここから分かるのは、
これらの
立派な経営理念が社員に浸透していないということです。
経営理念は企業において「企業文化」を形成するうえで非常に重要です。経営理念が無ければ、
その会社の判断基準は個人個人(主に社長)のメンタル・モデルに依存します。
ただし、個々のメンタル・モデルに頼った経営が必ずしも悪いわけではありません。
そこに「相互理解のためのコミュニケーション」があれば、お互いのメンタル・モデルの違いを超えて、創造的なアイデアが生まれることがあるからです。日産が過去に経営不振に喘いでいたとき、
カルロス・ゴーン氏が社長に就任しました。
彼は、日産リバイバル・プランの策定にあたって、
全世界の日産の工場を訪れ、
全ての立場の社員とミーティングを重ね解決策を練ったそうです。
そして、そこで得た解決策をもとに
日産はV字回復を果たしています。
中小企業ですと社長と社員の距離も近いので、
コミュニケーションのみで問題は解決できるかもしれませんが、
大企業においては、
経営理念なしに良い「企業文化」を継続するのは難しいのでしょう。
今回の日産の事件において、
経営陣と各工場との間で問題解決のための良いコミュニケーションは取られてはいないでしょう。
もし出来ていたら、
「今の検査員の人数では、その生産目標は達成できません。」ということが直ぐに分かったはずです。
そして、
コンプライアンスを重視する会社の企業理念が浸透していなかった現場は、
個々のメンタル・モデルで判断し、コンプライアンスよりも生産目標を重視した結果、違反は継続したのです。そのリスクも理解しないまま・・・。
経営陣は、
三菱自動車やその他の企業の事例から、
コンプライアンス違反が重大な経営危機につながる
リスクを認識していたでしょうし、
事実今回重大な経営危機に陥っています。
しかし、現場はそう感じていなかった・・。
完成車検査の検査員は、
その認定基準はメーカー任せであるということが、
各個人のメンタル・モデルに影響した可能性を否定できません。
車が生産される工程で様々な品質確認がされており、
完成車で不具合が見つかるのは
1/1000程度だということも影響しているかもしれません。
「完成検査は無資格者でも大丈夫。
不具合を見つけさえすればよい。」
という甘い認識が現場に蔓延していたのでしょう。
コラムの最初の方で社長のコメントを紹介しました。
「課長と係長にコミュニケーションのギャップがあった。」と。
私は、
「経営陣と現場の間にリスクに対する意識のギャップがあった。」と考えています。
そして、その原因は、
経営理念が浸透していない、及び、問題を解決するコミュニケーションを取らない
という「企業文化」に問題があったと考えています。「仮想体験」ゲームと研修を通じて「企業文化」を向上しコンプライアンス違反が起きない飲食店を作りたいと感じたら、お話だけでも良いので一度事務所まで遊びに来て、あなたの夢をお聞かせください。
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